後見申立て費用は、法テラスの制度利用で実費込み7万円(分割可)

この記事は、法テラスの法律扶助制度の実務に精通し、法テラス審査員の経験者である現役の司法書士が書いています。

資力が乏しく、後見申立費用の準備に苦慮している多くの方々が、躊躇なく後見制度を利用していくための一助になれば幸いです。

後見申立で発生する費用のしくみ 

ご親族の方などに判断能力の衰えがあり、成年後見や保佐、補助の申立てを家庭裁判所へ行う場合には、申立書等の一式を作成し、所定の添付書類とともに裁判所へ提出する必要があります。

この申立書一式の作成を専門家(司法書士又は弁護士)へ依頼した場合に、専門家へ支払う費用(報酬)はいくら位かかるのか?

これは大変気になるところです。  

≪後見申立に関する費用とは≫ 

後見申立(保佐、補助を含む)をする際に、家庭裁判所へ提出する書類の種類と、それらにかかる費用としては、大きく分けて次の3通りがあります。

① 申立人が作成する各種書類 ⇒ 専門家へ作成を依頼した場合は報酬

② 添付書類 ⇒ 戸籍等の取得費用の実費

③ 収入印紙・切手 ⇒ 実費

 

①の書類としては、申立書、財産目録、親族関係図、申立事情説明書、本人事情説明書、候補者事情説明書、親族の意見書等、所定の書類があります。

②の書類としては、医師の診断書、戸籍謄本、住民票、登記されていないことの証明書、財産目録の内容を疎明する各種資料(預金通帳のコピー、不動産の登記事項証明書・評価証明書、各種保険の証券等のコピー、負債に関する資料、遺産に関する資料等)、収入(年金等)や支出(施設利用料、医療費、生活費等)に関する資料があります。

③は、申立時に裁判所に納める印紙や切手で、後見申立ての場合は合計で7400円です(R6.5月現在)。

 

このうち、①の書類を作成していくのが大変な側面があるため、これを専門家(司法書士又は弁護士)へ依頼をして作成してもらうことができますが、この場合は書類の作成料としての報酬金が発生します。

≪司法書士・弁護士への報酬≫

専門家へ仕事を依頼した場合に支払う報酬金については、現在、各事務所における報酬額は自由化されておりますので、同じ仕事でも高い事務所もあれば安い事務所もあります。

各事務所のホームページには後見申立に係る報酬額が明示されているケースがありますが、一般的には10万円前後(税別)の事務所が多いようです。この金額は、あくまで①に関する報酬金額であり、その他に②や③の実費分は自己負担として別途かかります。

ところで、わが国には 法テラスの民事法律扶助という公的な制度があります。 

  

法テラスの法律扶助制度の利用

法テラスの民事法律扶助制度は、総合法律支援法に基づき設立された日本司法支援センター(通称法テラス)が行う公的な制度です。

法律扶助制度を利用した場合、司法書士や弁護士への報酬額は所定の金額(後述)が規定されており、同制度を利用しない場合と比較して、場合によっては大幅に安くなるのです。

このようなことから、後見申立てにかかる費用についは、法テラスの法律扶助制度の利用の有無で、費用面で大きく異なっていくわけです

(注意)民事法律扶助制度は資力が少ない人をサポートしていく制度であり、この制度を利用するには、収入と資産において一定の基準が定められており、その基準を満たす方が利用することができます。資力が十分な方や、お金持ちの方は利用できません。

利用基準の詳細は、法テラスの立替制度を利用できる人の条件(収入や資産の基準)をご覧ください。  

 

法テラスの制度を利用したときの後見申立の費用
~書類作成援助の立替基準~

後見申立において、法テラスの書類作成援助を利用した場合に発生する専門家への報酬や実費については、上記基準表中(6)のとおり、次の金額です(業務方法書別表3)。

(報酬)44,000円~66,000円 + (実費)15,000円

 合計 59,000円~81,000円

上記のとおり、法テラスの基準では、報酬金額が44,000~66,000円となっていてわかりづらいのですが、法テラスの書類作成援助の申込時において、専門家側も被援助者側も特段の事情を言わなければ、中間の額(44,000円~66,000円だったら55,000円)で決定されているのが一般的です。

よって、法テラスの書類作成援助を利用した場合の専門家への報酬は5万5000円と考えておけばよく、その他実費の1万5000円と併せて、合計で7万円となります。

そしてその支払いについては、月額5000円、7000円、1万円ずつ(選択可)の分割払いが可能です。   

特筆すべきは、この7万円の中には既に実費分として1万5000円分が含まれていることであり、上記②や③の取得費用については、原則として、15,000円までは利用者のご負担がないということです。

(注1)②のうち、「医師の診断書」の取得費用は法テラスの実費分には含まれませんので、別途申込者(利用者)の自己負担となります。

(注2)実費15,000については確定した金額であり、たとえ実費として15,000円を使いきらなかった場合でも清算(返還)はされません。  

 

後見申立ての費用を抑えるために

後見申立て時に要する費用を抑えるためには、上記「法テラスの書類作成援助」を利用することです。法テラスの法律扶助制度は公的な制度ですので、安心して利用できます。

同制度を利用した場合、司法書士や弁護士に支払う費用は、全国どこでも上記の金額でできます。

よって、この制度を利用すれば上記の金額で後見の申立てができるのですが、みなさん法テラスの制度のことをご存知ないので、同制度を利用せずに高額な手続費用を支払ってしまう方もいるようです。 

ご本人の判断能力に衰えが見え始め、ご本人の今後の生活や財産を護っていくためには、速やかに成年後見制度を利用していくことが求められるているにもかかわらず、申立費用を気にするばかりに、これを躊躇してしまうことは本末転倒なことです。

そのような時に、法律扶助制度の存在は非常に有益です。

資力が少なく、後見申立費用がご心配な方は、法テラスの法律扶助制度の利用が可能な司法書士や弁護士に書類作成の依頼をしていくとよいでしょう。

(ご注意)すべての司法書士や弁護士が、法テラスの制度を利用して仕事を引き受けてくれるものではありません。

そこで、あなたが法テラスの制度を利用して後見申立書の作成を希望する場合は、まず相談をした司法書士や弁護士さんに対して、

「私は法テラスの制度を利用して後見申立をしたいのですが、貴事務所では法テラスを使えますか?」

と聞いてみて、法律扶助制度の利用をお願いしてみるのもよいでしょう。

その事務所の司法書士や弁護士が法テラスと提携(法テラスに登録)をしている場合は、その事務所でも法テラスの制度が利用できますよ。

それらの事務所でも、後記❷の「持ち込み方式」による法テラスの利用に応じてもらえれば、費用が安くなることから依頼も格段にしやすくなり、あなたにとっても非常に有益なことといえるでしょう。 

 

法テラスの法律扶助制度を利用するには、申込みの方法は2通りあります 

法テラスの制度を利用して申込む方法は、次の2通りがあります。 

  
❶ 各県に設置されている法テラス直轄の事務所
電話をして相談に行き、そこに常勤する弁護士さんに引き受けてもらう。

 あなたのお近くの法テラスの事務所は こちら  からお探し下さい。 

 法テラスと提携している弁護士や司法書士(☚クリックしてQ7へ)を、HPや法テラスの登録名簿などから探し、自分でアポイントを取ってその事務所に直接相談に行き、その弁護士や司法書士さんを通して法テラスへ利用の申込みを持ち込んでもらう。

この方法を「持ち込み方式」(☚クリックしてQ1へ) といいます。

   

(注1)❶の場合は所定の司法書士や弁護士を指定したり選ぶことはできません。

(注2)❷の持ち込み方式の場合は、司法書士や弁護士を自分で選択して法テラスの申込みができるというメリットがあります。

つまり❷の場合は、自分が気にいった先生に依頼をすることができるということです。

あなたに「この先生は信頼できそうだ」「是非この先生にお願いしたい」と思える意中の先生がいる場合には❷の方法がよいでしょう。

なお,❶と❷は申込方法の違いだけで金額は同じです。  

Q. 法テラスの制度を利用できる事務所をどうやって探したらいいの?

最近では、司法書士や弁護士のホームページで、「法テラスの利用可」「法テラス対応」と表記している事務所もあるようです。


そこで目星をつけた事務所に電話をして、
「後見申立を検討しているのですが、そちらの事務所は法テラスの制度を利用できますか?」と率直に聞いてみるのもよいでしょう。

事前に「法テラス利用可」であることを確認してから、その事務所に相談に行けばよいのです。


(注目1)「 法テラスと提携(登録)している弁護士や司法書士 」の名簿は、各県の法テラスのホームページに掲載されている場合がありますから、法テラスHPから確認してみて下さい(掲載されていない県もあります。)。

(注目 2)「法テラス提携の弁護士・司法書士」ってな〜に?については、こちらのページ  のQ7をご覧下さい。


(注目 3)  法テラスの制度を利用できる事務所がどうしても見つからない場合は、あなたのお住まいの都道府県には必ず法テラス直轄の事務所があります。そこは法テラスそのものですから、あなたが利用条件をクリアしている場合は、法テラスの制度が必ず利用できます。 

市町村担当者や福祉関係者の苦悩とは  

私は、司法書士として15年以上にわたり成年後見業務を行ってきていますが、その中で、市町村役場のご担当者、地域包括支援センターや社会福祉協議会の方々、各種福祉施設の方々から生の声を聞く機会があります。

 

例えば、身寄りがなく、資力もない方の衣食住や心身の状態に困難が生じた場合に、最初に関与していくのは市町村、地域包括、社会福祉協議会や各種福祉施設などです。

そして、さらにご本人に判断能力の衰えが見られて、成年後見制度の利用が必要となった場合には、家庭裁判所へ申立てをする必要がありますが、このときの申立人を誰にやってもらうのかという問題があります。問題の所存は、原則として、申立てにかかる手続費用は申立人が負担することになっていることにあります。

民法には四親等内の親族は申立人になれると規定されていますが、身寄りがない方について、その親族を探し出していくという第一の苦難があります。

そこで、市区町村や地域包括、社協、福祉関係者等が協力し、なんとか調査をして申立人たる親族を探しだし、申立てをお願いしていくという例が考えられます。

ところが、第二の苦難として、連絡を受けた四親等内の親族としては、疎遠でほとんど関わりもない本人のために、自分が高額な申立費用を負担してまで申立てに協力してくれるなんてことは普通はしないものです。疎遠なご親族にとっては、そんな金は出せない、どんな義理で、何で私が?、そんなん知らんわ~、という気持ちになるのはごもっともなことで、ここの問題はとても難しいところです。

そんなときに、安価で分割払いが可能な法律扶助制度の存在は、市町村や関係機関側から、疎遠のご親族の方への説得材料になり得る側面があります。

もし、疎遠な親族のご協力が得られて親族申立ての途が開ければ、市町村側としても、面倒な首長申立を回避できるという利点があります。

このようなことから、市町村や福祉関係者が、法テラスの法律扶助制度を積極的に利用してくれる司法書士や弁護士と繋がりを持ち、後見申立については、当たり前のよう法律扶助制度を利用していくことが一般化され、かつ国民にも周知していければ今後高齢化社会が顕著となっていくわが国の将来においては、非常に有益なことなのではないかと考えるところです。

司法書士 五十嵐正敏

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司法書士・特定行政書士  五十嵐 正 敏

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当事務所は、気になる「費用」面についてはいつも誠実でありたいと考え、適正と明瞭を心掛けています。法テラスの法律扶助制度の利用に対応し、資力の乏しい方への法的救済が実現できるよう取り組んでいます。これが、秩父市・いがらし司法書士事務所の特徴です。