どうして「ひきこもりラジオ」を聴き続けるのか

毎月最終金曜日の夜8:058:50NHK第一で放送される「ひきこもりラジオ」という番組をずっと聴き続けています。これは完全生放送です。

私はひきこもり生活をしているわけではありませんが、ずっと聴き続けています。

どうしてそうしているのか、その理由を少しお話ししたいと思います。

 

この番組の最後の締めの言葉はいつも決まっています。

「みなさん、生きてまた会いましょう。」

栗原アナが発するこの一言に、この番組が存在する意味がすべて集約されているように思えます。 

以前「ひきこもり万歳!さあ、みんなでひきこもろう」でも取り上げたことがありますが、この番組は、ひきこもりの ひきこもりによる ひきこもりのための番組 です。

故あって現在ひきこもりの状態にある全国各地のリスナーに向けて、栗原望アナウンサーを進行役として、同じ境遇にある者同士がそれぞれの行き場のない心うちを共有し、たとえささやかであっても、たとえ一瞬であっても、生きる希望と勇気を感じ取れればそれでいいのです。

そして一か月後の最終金曜日の夜、生きてまた会えればいい、それがこの番組の目的なのでしょう。

 

リスナーの中にはうつ病になっている方も少なくないようです。

日々、希死念慮にさいなまれている人も少なくないようです。

そんな人たちがメールやお手紙、ときに電話口のむこうから今の率直な気持ちを語ってくれます。

匿名だからこそ、ありのままの心のうちを話してくれています。

生放送ですから、そんな切実なお話しをリアルタイムで聞いていて感じることは、どうしようもない不安、迷い、後悔、孤独、絶望、そして死への願望と恐怖を抱えながらも、なんとか生きている人たちが、世の中にはこんなにもたくさんいるのかということです。

 

ひきこもりラジオに限らず、人はみんな、密かに心の中に悩みを抱えています。

世間体を繕うために、外では、いかにも青い芝の上でにこやかな顔をしている。

けれども心の中はけっして穏やかではない、という人たちが街中にはゴマンといるのです。

以前の私もそうでした。

あなたもそうではないですか?

何かしら、自分が死んでしまいたいと思ったことはありませんか?

 

深いい言葉

あなたもいつかきっとヒーローになれる。だって、ごく普通の人間だから。左上には、すでに光が差しはじめていますよ。

2003年(H.15)頃、私は人生のどん底にありました。

幸いうつにはならなかったのですが、うつの一歩手前になったことがあります。

当時の私は、幸いにして仏教、即ち仏さまの教えというものに触れ学んでいたこともあって、自分の中で自分の状況を見つめ、考え方の転換をはかりながら、最悪の状態は五日ほどで脱することができました。

しかし今振り返ってみても、あの五日間はとても辛かった。だからなんとなくわかるのです、うつの人の苦しさが。

ひきこもりラジオに参加されている人たちは、決して特別な人たちのお話しではない、ということを私は知っています。

 

あれから二十数年が経って、私は今、当時のどん底からは完全に抜け出し、大いなるはからいのもとに司法書士という職を得ることができ、健康で五体満足な身体を持ち、特段大きな心配事もなく、比較的、日々穏やかな心を実感しながら過ごすことができています。

ありがたいことです。 

そんな私が、司法書士の端くれとして何ができるのだろうかと考えたときに、二十数年前の自分の姿を忘れず、ひきこもりラジオの人たちの存在を気にかけながら生きていくことの大切さを感じているからです。

 

私は、平成21年夏に四国八十八か所を歩いて遍路した経験があります。

お遍路中、毎日つけていた日記にはこのような記述があります(原文ママ)。

 6/23 23番薬王寺 ポスター

     人の道

 苦しみの声を聞いていこう

 悲しみの声を聞いていこう

 たとえ 力になれなくても

 人間らしいやさしさを

 もちつづけていこう

(上記一節は、6月23日、札所23番を参拝した際に、寺の山門か境内か社務所のどこかにあったポスターの中の「人の道」を説いた文言で、当時私の心の琴線に触れその場でメモに記したものが、今、手元の手帳に残されているものです。)

 

今も世の中の片隅で、自責の念を持ちながら悶々としながら慎ましく生きている人たちがいる。

ひきこもることで命が繋げるなら、どんどんひきこもっていればいいさ。

そんな優しさと心の広さを持てる人間でありたい。

そしてその感性というものを、何らかの形で今の自分の仕事の中に生かせていければと切に思う。

15年前、道中二十三番の札所でたまたま目にしたあの言葉は、今も無意識のうちに私の中で生きているように感じています。

令和七年 お正月

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司法書士・特定行政書士  五十嵐 正 敏

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